この記事の監修者

㈱イレブン技術商品部 部長
インストラクター
村上 琴音(ムラカミ コトネ)
株式会社イレブンで商品開発とインストラクターを担当。資格と現場経験を活かし、個人サロンの成長を支援しています。
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㈱イレブン技術商品部 部長
インストラクター
村上 琴音(ムラカミ コトネ)
株式会社イレブンで商品開発とインストラクターを担当。資格と現場経験を活かし、個人サロンの成長を支援しています。
エステサロンを開業する際、いちばん悩ましいのが「保健所への届出は必要なのか」「どの書類を、いつ提出するのか」という実務面です。本記事では厚生労働省の最新通知と東京都・大阪市など主要自治体の様式改訂(2025年3月更新)をもとに、届出の要否を決める施術ライン、衛生管理要領の具体的基準、電子申請の可否、そして立入検査や感染症ガイドラインまでを網羅的に整理しました。
首から上の施術(まつエク・シェービング・ハイフ等)や刃物・高出力機器を用いる場合、または理美容師など国家資格者が関与する施術は美容師法の「美容所」に区分され、営業前に保健所へ開設届を出し施設検査を受ける義務があります。ボディ中心メニューのみなら届出不要ですが、医療類似表現は禁止なので広告文言にも注意しましょう。
首から上を対象にするまつエク・顔剃り・医療級ハイフ、また刃物を用いるシェービングやニードル脱毛は、施術者が理容師・美容師など国家資格を保有していてもいなくても、美容師法の「美容行為」に該当します。営業開始前に開設届(様式1)・従業員名簿・平面図・診断書を所轄保健所へ提出し、施設検査を経て「美容所確認済書」を交付されて初めて営業が可能です。東京都では提出締切が検査10日前、大阪市では持参提出のみ対応と手続きが異なるため、必ず管轄保健所へ事前相談を入れましょう。違反営業は30万円以下の罰則と営業停止の行政処分を受けるリスクがあります。 保健医療局大阪市公式ウェブサイト
ボディ痩身・リンパドレナージュなど体幹部のみを対象にし、刃物・高出力レーザー・医療機器を使用しない施術は美容所に該当せず、開設届は不要です。ただし広告表現で「治療」「医療」「効果保証」など医療類似行為を誤認させる文言は景表法・医療法違反となるため厳禁。衛生面では美容所基準が努力義務として推奨されており、器具の洗浄記録やCO₂モニタリングを残すことで、のちにフェイシャルメニューを追加した際の検査がスムーズになります。相談は無料なので、開業地を所管する保健所で内装図面を見せながら要否判断を仰ぐのが安全策です。
新要領では施術室13㎡/イス6台上限、不浸透性床材、100ルクス以上の照度、CO₂0.5%以下を維持する換気量を数値で明示。洗い場に流水装置と消毒薬、器具はアルコール70vol%または0.1%次亜塩素酸で10分以上浸漬、リネンは70℃30分乾燥が推奨されるなど、衛生基準がより具体化しました。
衛生管理要領では施術室の床面積13㎡以上・美容イス6台まで/13㎡、追加は3㎡ごとに1台という配置上限が定められています。床・壁は水分や薬剤を吸わないタイルや硬質塩ビシートなど不浸透性素材を指定。照度は100ルクス以上で光源ムラを避け、CO₂濃度は0.5%以下を維持するため、毎時6回相当の機械換気が推奨されます。排水口は逆流防止トラップ付きで、洗い場には流水装置と温度計が必須。東京都は平面図に給排水経路を明示するよう求め、検査時は実測で照度・換気量をチェックするなど、国基準に加えて独自の“上乗せ”運用がある点にも注意が必要です。
器具は70vol%以上アルコール、または0.1%次亜塩素酸に10分以上浸漬し、乾燥後に密閉容器へ。リネンは洗濯→70℃30分以上の乾燥殺菌を推奨し、クリーン棚と使用済み棚を完全分離します。従業員は年1回健康診断を受診し、結核・伝染性皮膚疾患がない旨の診断書を3か月以内に準備。東京都では診断書のコピー提示で可、原本提出不要ですが、大阪市は原本提出が求められるなどローカルルールが存在します。手指消毒は施術前・施術中(部位変更時)・施術後の3タイミングで義務付け。チェックシートを作成し、立入検査で提示できるよう5年間保存すると再指導リスクを大幅に減らせます。
参考サイト:ホーム|厚生労働省
東京都は届出書を検査10日前必着、オンライン事前相談で最短1週間交付。大阪市は持参提出のみで検査は営業3〜5日前、手数料は収入証紙納付。地方では住民票や登記事項証明書など追加書類を求めるケースが多く、窓口や様式番号も異なるため、開業地の生活衛生課ページで最新PDFを確認して逆算スケジュールを組みましょう。
東京都は「美容所の開設に関する基準等について」ページで、開設届を検査予定日の10日前必着と定め、図面PDFをメールで送付後にオンライン面談を推奨しています。検査枠は週2回(火・木)が基本で、書類不備がなければ最短1週間で確認済書が交付されます。電子申請は23区を除く市町村区域で試行中ですが、原本郵送は当面継続。副本返却用封筒と返信用切手を忘れると交付が遅れるので要注意です。
大阪市はWEB提出を認めず、生活衛生監視事務所持参のみ。総面積が既存の2倍以上になる改築も「新規開設」と同じ手順となり、開設届〔様式1 2025.3改〕を提出後、検査は営業3〜5日前に行われます。手数料24,000円は大阪市収入証紙で納付するため、金融機関・証紙売りさばき所の営業日に注意。地方独自の「施術所開設届」(あはき所向け)と混同しやすいので様式番号を必ず確認してください。
参考サイト: 大阪市公式ウェブサイト大阪市公式ウェブサイト
政令市以外では、開設者が法人の場合登記事項証明書(6か月以内)、外国籍を含む場合は住民票(国籍記載*の添付を義務付ける自治体が多いです。診断書の様式指定や「開設届副本に代表者の捨印」を求める県も。自治体公式サイト「生活衛生課 美容所 開設届 添付書類」でPDFチェックリストを入手し、取得に要する日数を逆算しておくとスケジュール遅延を防げます。 保健医療局
必須は開設届2部、従業員名簿、縮尺1/100平面図、3か月以内の診断書、検査手数料2万4千円。法人は登記事項証明書、管理美容師講習修了証などを追加。副本返却用封筒や返信切手を忘れがちなので、提出前に自治体チェックリストで封入漏れを防ぎ、修正再提出による検査日延期を回避しましょう。
法人の場合は登記事項証明書と定款の写しを用意し、代表者変更時には「開設者地位承継届」を提出。有資格者が2名以上いる場合、管理美容師講習修了証コピーを添付し、常勤管理者のシフト表を検査時に提示できるよう準備します。海外資格の場合は日本語訳付きの資格証明と厚労省認定の評価書が必要で、審査に1〜2か月を要するため予定日から逆算して手配を。従業員が退職した際は「従業者変更届」を10日以内に提出しないと改善命令の対象になります。
参考サイト:大阪市公式ウェブサイト
レイアウトは施術室と待合室を明確に区分し、未洗浄・洗浄済・消毒済リネンを動線上交差させない配置に。換気設備は毎時6回外気交換が目安で、CO₂モニター常設が望ましい。床壁はタイルや硬質塩ビで不浸透性を確保し、水まわりの逆流防止トラップも忘れず図面に記載。着工60日前の保健所ヒアリングで基準適合を事前確認しましょう。
検査で最も指摘が多いのは「13㎡未満」や「イス過密配置」です。イスは6台/13㎡が上限で、超える場合は3㎡追加ごとに1台増設可。施術室と待合室はパーテーションや袖壁で視覚的にも空間的にも分離し、器具保管庫(清潔)・使用済みリネンBOX(不潔)を対角に配置して交差汚染を防ぎます。洗い場は施術室内に設置し、流水装置と温水混合栓を備えることで合格率が高まるほか、東京都では手拭い専用乾燥機の設置も推奨されています。図面に動線矢印と寸法を入れ、検査員が一目で基準適合を確認できる形式に仕上げることが時短のコツです。
参考サイト: 保健医療局
CO₂濃度は0.5%以下を維持するよう要領で規定されています。市販のCO₂モニターを受付と施術室に常設し、数値を日報に記録しておくと検査で高評価。換気は天井埋込型ロスナイなどで毎時6回の外気交換を確保し、フィルターメンテナンス記録を残します。照明はLED昼白色で平均100ルクス以上、影が出やすいベッド周りはスポットライトで補填。大阪市は光束不足が指摘理由の上位を占めるため、照度計で実測した数値を検査前に図面に追記しておくと指摘軽減につながります。
参考サイト:ホーム|厚生労働省
日本エステティック協会の第6版では、来店前健康チェック、施術毎のベッド・機器消毒、連続CO₂測定、感染判明時の情報開示フロー、キャンセル料緩和が推奨事項として追加。問診票と体温記録の保存期間は1年へ延長されました。ガイドライン遵守は法的義務ではないものの、立入検査時の評価と顧客信頼向上に直結します。
第6版は①来店前健康チェックシート②施術毎のベッド・機器消毒③CO₂連続測定④スタッフ感染時の情報開示と休業基準⑤キャンセルポリシー緩和を柱に改訂。問診票と体温記録の保存期間は1年へ延長され、お客様が感染判明後に立入検査を受けたケースも報告されています。ガイドラインは努力義務ですが、厚労省要領と併用すると顧客安心度が高まり、口コミサイトでの評価向上にも寄与します。
受付→更衣→施術→パウダー→退店を「一方通行」に設計し、未洗浄リネン→洗浄済→消毒済→クリーン棚の順に3層管理すると交差汚染を防げます。タオルウォーマーは90℃20分以上、ベッドカバーは客毎交換を徹底。決済は非接触型導入で現金授受を減らし、ボールペンやタブレットは使用毎にアルコール清拭することで顧客の不安を軽減します。館内掲示で「当店の感染対策10カ条」を示せば安心感と差別化を同時に演出できます。
理想は90日前に保健所相談→60日前着工→30日前届出→10日前検査予約→3日前最終清掃。検査手数料以外に不浸透性床材張替え1㎡5千円、換気増設15万円、洗い場増設10万円前後が追加で発生。原材料高騰を考慮し見積もりの5〜10%を予備費に充てると資金ショートを防げます。
理想的な流れはオープン90日前に保健所へ図面持参→60日前に内装着工→30日前に開設届提出→10日前に検査予約→3日前に現地清掃と書類最終チェック→オープン当日。保健所ヒアリングでは検査基準の“上乗せ”運用を聞き出せるため、後戻り工事によるコスト増を防止。融資を利用する場合、公庫面談は60日前までに終えると内装着工資金のタイムラグを解消できます。
参考サイト:大阪市公式ウェブサイト
検査手数料は全国平均24,000円(東京都・大阪市同額)が相場。衛生基準に合わせた追加工事として、不浸透性床材張替えで1㎡5,000円、換気システム増設で15万円、洗い場新設で10万円前後。感染症対策でCO₂モニター(約1万円)や非接触決済端末(数千円)も必需品化しています。原材料高騰を踏まえ、見積額の5〜10%を予備費として積み増しておくと資金ショートを防げます。
参考サイト:大阪市公式ウェブサイト
立入検査は年1回が目安。消毒記録、CO₂ログ、タオル洗濯記録、健康診断書を5年間保存し、電子化すると検索と共有が容易。指摘を受けた場合は14日以内に原因分析と再発防止策を盛り込んだ改善報告書を提出し、再検査で確認済書を再交付してもらう流れです。
保健所の立入検査は原則年1回、苦情がある場合は随時行われます。チェックされるのは消毒記録、CO₂ログ、タオル洗濯記録、スタッフ健康診断書など。指摘事項があった場合は14日以内に改善報告書を提出し、再検査で確認済書を再交付。電子帳票システムを導入し、改ざん防止機能付きで5年間保存すると紙保管の労力を大幅に削減できます。是正報告は「指摘事項→原因→改善策→再発防止策」の4段構成で簡潔にまとめるのがポイントです。
参考サイト: 保健医療局
届出の完全オンライン化は東京都市町村部で試行中、原本郵送併用が現状。大阪市ほか多くの自治体は紙提出のみ。自宅サロンでも首上施術や刃物使用、国家資格施術があれば美容所扱いとなり、生活空間と施術室を建具で分断し独立した洗い場と換気設備を備える必要があります。迷ったら必ず保健所に図面を持参して相談しましょう。
東京都は市町村部で電子申請を試行中ですが、原本郵送を併用する「ハイブリッド方式」。大阪市はWEB申請非対応で持参必須です。各県とも2026年度までにオンライン完結を目指す計画があるものの、現時点ではPDF送信+郵送が主流と覚えておきましょう。
参考サイト: 保健医療局大阪市公式ウェブサイト
首上施術・刃物使用・国家資格施術がある場合は自宅でも美容所扱いとなり、施術室と居住空間を建具で区切り、独立した洗い場と換気設備が必要です。ボディのみでも広告の医療的表現は禁止。迷ったら管轄保健所で図面を見せて判断を仰ぎましょう。
まとめ
最新の国通知と自治体ガイドを押さえれば、届出要否・内装仕様・立入検査対応まで一気にクリアできます。まずは60日前までに保健所で図面相談を行い、追加コストを最小限に抑えながらスケジュールを確定しましょう。整った衛生環境と確実な法令遵守は、サロン経営の信頼と持続成長を支える最大の武器です